百社百様、経営映す鏡――温まる企業年金、株高下の再生

2006年2月7日 日経金融新聞 website top page

 日本企業の経営への足かせとなり続けてきた企業年金が、急速に息を吹き返している。背景は3年続きの株高と、確定拠出年金(日本版401k)の導入や代行返上といった構造改革の進行だ。ただ会計制度の変更や働き方の変化で、年金が業績全体や企業と従業員の関係に強い影響を与えるようになったのも事実。企業ごとに多様さを増す年金は経営哲学を映す鏡ともなり始めた。

2/6-2/10の見どころ企画2 「変わる企業年金」

制度改革や株高の恩恵で一時の危機を抜けたかに見える企業の年金。多様化が進む現状と今後の課題を探る。

<紙面から>
10年前の記事(2/7)

守田正樹デスク

 自分が手掛けた企画記事というのは、かなり前のものでも覚えているものです。10年あまり前に日経金融新聞で連載した「年金を考える」というシリーズ企画がそんな例です。

 「優良企業に隠れ債務の重圧」「トヨタの積み立て不足、数千億円規模か」――ちょっと気負った感じの見出しの記事を読み返すにつけ、掲載日に読者からの反響の大きさに驚かされたことを思い出します。白状すると、「日本企業の年金問題はこんなに深刻だったのか」と本格的に実感したのは、初回の記事を掲載して、「この予測給付債務とはどのように算出すればいいのか」「格付けなど企業評価にはどう反映するのか」といった企業の財務担当者や投資家からの真剣な問い合わせに接してからのことでした。

 それから10年強。日本企業の経営にとって足かせになり続けてきた企業年金は明らかに最悪期を脱け出しました。株高とさまざまな制度改革に後押しされ、積み立て不足は3年前の半分以下の水準に減っています。

 何がどう変わったのでしょうか。10年前の企画以来親しくなった年金専門家は「企業年金の時代は終わったということ」とあっさり言います。要するに、ひとつの枠組み、ひとつのやり方では説明できない企業ごとの「個の時代」に企業年金は入ったというのです。

 だからこそ、油断はできないはずです。株高が止まったときはどうなるか。そうでなくても、これから10年後に企業年金の加入者や企業の株主がみな同じ笑顔でいられるかどうか。きょうからの4回シリーズで現状を分析し、問題提起していければと思っています。